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ディズニーアトラクション因数分解論

東京ディズニーリゾートのアトラクションは、人気のものから人気でないものまで多数あり、ランド・シーあわせておよそ50程を数え上げるまでになっている。それだけ多くの人間がいれば、それだけ多くの感想に晒されるのも当然の帰結なわけで、ゲスト各人のアトラクション観がそれを決定付けることになる。

今回は、「ディズニーアトラクション因数分解論」と題して、アトラクション内に存在する要素を「因数分解」することで、各々のアトラクションがどのようなものなのか洗い出す方法論について記していこうと思う。

 

本文は、たみふるDが自身のツイッターアカウント(@tamifuru_d)で連載中のタグ「#たみふるDのアトラク論」から多分に引用したものであります。

 

「アトラクション」と「人気」

「アトラクション」と「待ち時間」

現在東京ディズニーリゾート内にあるアトラクションは、その殆どに「待ち時間表示」が出ており、基本的にこれが人気の指標となることが多い。無論、一度に多くのゲストを容れられるかなどの事情で数字の信憑性は大きく変化するが、人口に膾炙した判別方法であることから敢えてこれを用いようと思う。

例えば、アトラクション「白雪姫と七人のこびと」なら平均5~15分ほど、「ホーンテッド・マンション」ならば45~60分ほど、人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」ならば、120分~150分なども珍しい数字ではない。

又、人気アトラクションには「ディズニー・ファストパス」が導入されており、これは指定された時間にアトラクションに向かうと、特別な入り口から入場できるというものである。

待ち時間が多いほど、多くの人が楽しみたがっている、コレ即ち人気であると解釈されるわけだが、ここには大きな落とし穴がある。

 

「人気」と「待ち時間」は本当に比例するのか?

これが、上の項目で「無論、一度に多くのゲストを容れられるかなどの事情で数字の信憑性は大きく変化する」と記載した理由に他ならない。「人気」と「待ち時間」は必ずしも比例しないのだ。

例えば、アトラクション「モンスターズ・インク:ライド&ゴー・シーク!」は待ち時間が三桁になることも珍しくない。ともなると人気ライドのように「見える」が、実際はその限りではない。このアトラクションの乗り物は、定員が2名(子供を含むと3名)のライドが6台連なって乗り降りをすることになっており、一度に12人のゲストを『モンスターズ・インク』の世界へと連れ出すことが出来る。一方で平均的な待ち時間が10分~30分程度、混雑しても60分を超えることがまず有り得ないというアトラクション「カリブの海賊」の場合、20人が乗れるボートが二台やってくる。つまり、一度に40人のゲストを海賊の海へと運んでいく。

このふたつの違いは大きい。仮に乗り降りにかかる時間が同じだとした場合、36人のゲストを一度に処理できる「カリブの海賊」よりも、三回に分けて処理することになる「モンスターズ・インク~」の方が混雑するのは必然だ。このようにして、アトラクションの待ち時間はアトラクションそれ自体の性質に大きく左右されるという側面をひとつ確認しておきたい。

又、「ディズニー・ファストパス」の存在も厄介だ。「カリブの海賊」いファストパスは対応していない。つまり、36人のゲストがいたら36人をそのまま乗り場に案内すれば良い。然し、「モンスターズ・インク~」の場合、36人のゲストが列に並んでいたとしてもその中にファストパス利用者が入り込んでくる。そのため、通常の列は何度も停止するし、ファストパス利用者がいない場合よりも後のライドに乗ることになってしまう。

他にも、アトラクション乗り場に向かう前にショーを行う「プレショー」が存在していたり、一度に数百人単位でゲストを容れるが、代わりにアトラクションが動いている間は待ち続けなければいけない「シアタータイプのアトラクション」形式があったりする。

 

誤った待ち時間表示がある?!

東京ディズニーランドならこの「モンスターズ・インク:ライド&ゴー・シーク!」、それから東京ディズニーシーなら「海底2万マイル」などのアトラクションは、どうしても待ち時間が伸び易い。すると奇妙な現象が起こる。

多くのゲストは、「待ち時間=人気」だと思い込む「待ち時間主義」に基づき行動している。そのため、待ち時間の多いアトラクションにはそれだけの期待値が発生するし、それには一定の妥当性がある。然しながら実際は「待ち時間=人気」とも限らないため、そこには明らかな誤差が生じる。

そのため、「純粋な人気よりも、誤って待ち時間が長くなってしまうアトラクション」がこの世には存在するのだ──そして、それが上の二つの不幸なアトラクション「モンスターズ・インク:ライド&ゴー・シーク!」と「海底2万マイル」なのである! その他にも東京ディズニーランドならば「ピーターパン空の旅」などは槍玉に挙げられやすいが、このような現象に陥るアトラクションは枚挙に暇がないのだ。

これらのアトラクションは次の問題がある。

①純粋な人気よりも、誤って待ち時間が長くなってしまう

②そのため、純粋な魅力よりも、期待値が高くなってしまう

③実際の魅力と期待値のギャップから、アトラクションを楽しむことが出来なくなる

この問題の解決には、「ディズニーアトラクション因数分解論」が役に立つことだろう。

 

ディズニーアトラクション因数分解論とは

ここで本題であるところのディズニーアトラクション因数分解論へと話を進めていく。

このディズニーアトラクション因数分解論は、アトラクションの根本にあるものを選り分けていくことである。これにより、ゲストの中で期待値を意図的に操作することが出来るのである。

例えば、「モンスターズ・インク:ライド&ゴー・シーク!」について考えてみる。このアトラクションは、映画『モンスターズ・インク』の世界観に基づいていて、ライドについているフラッシュライトという懐中電灯を用いてモンスターを探し出すかくれんぼゲームの要素を持っている。

モンスターズ・インク:ライド&ゴー・シーク!」は第一に「参加型アトラクション」だが、同時に「映画を忠実に再現したアトラクション」であり、「演出面に秀でたダークライド」である。又、「ゲストの写真を撮影するライド」でもある。

多くのゲストが「参加型アトラクションとしてのモンスターズ・インク~」に期待値をつけてしまい、隣にあるアトラクション「バズ・ライトイヤーアストロブラスター」と比較する。待ち時間がおよそ同様、若しくは「モンスターズ・インク~」の方が長いことを確認して、ゲストはこれに「バズ・ライトイヤーアストロブラスター」以上の期待値を抱く。然し、「参加型アトラクション」としての機能が十分でないため、ゲストは「待ち時間に見合わない」と錯覚する。待ち時間=人気=期待値は「モンスターズ>バズ・ライトイヤー」なのに、魅力は「モンスターズ<バズ・ライトイヤー」であるからだ。

然し「映画を忠実に再現したアトラクションとしてのモンスターズ・インク~」は、東京ディズニーランド内の「白雪姫と七人のこびと」や「ピノキオの冒険旅行」などよりも格段に表現力が高い。そのため、待ち時間=人気=期待値は「モンスターズ>白雪姫&ピノキオ」であり、魅力も「モンスターズ>白雪姫&ピノキオ」となる。

このように、複数アトラクションの待ち時間を比較した際に生じる矛盾を、楽しみ方の面で帳尻あわせすることが可能なのである。そして、その技術こそ「ディズニーアトラクション因数分解論」なのである。

「ディズニーアトラクション因数分解論」により、期待値の基準を鞍替えすることで、「純粋な人気よりも、誤って待ち時間が長くなってしまうアトラクション」の純粋な人気=期待値を意図的に引き上げることが可能だ。これを使わない手はない。用は難しいことではなくて、アトラクションを「別の視点」から楽しむことが大事なのである。

 

「ディズニーアトラクション因数分解論」はみんな無意識にやっている?

「ディズニーアトラクション因数分解論」の意義

私は、自分の発見した事柄に名前をつけるのが好きである。然し、私の見つけたものなぞ大抵は誰かが既に見つけている。つまり、私は「当たり前の出来事」にわざわざ名前をつけなおしているに過ぎない。

そもそも、冒頭に記しているように、多くのゲストが自分の頭の中で勝手に自分の評価基準で期待値をでっち上げているし、それは因数分解論の中に含まれるお仕事である。問題は、これをどのようにして因数分解できるか、どのように活用できるかということなのである。

利用例①潤滑なコミュニケーション

例えば、友人との会話に於いて用いる場面を想定する。アトラクション「プーさんのハニーハント」を想像してみると、このアトラクション最大の特徴は「レールがない場所をライドが自在に動き回ること」である。友人に

プーさんのハニーハントってどうやって動いているの?」

と質問された時、「プーさんのハニーハント」を因数分解する。このアトラクションは「トラックレスライド(レールがない場所を自在に動き回るライド)の先駆け」であり「技術的見所の多いアトラクション」であり、「くまのプーさんの世界を見事に体験させるアトラクション」である。

例えば相手がディズニーパークの仕組みや技術的な面に興味がある・ありそうならば

「トラックレスといって、電磁波とGPS機能を用いた……」

と技術的な説明が可能だ。他方、ディズニーパークに夢見がちな場合なら

「100エーカーの森の川を蜂蜜の壷で流されていくストーリーだよ」

などと説明が可能だ。こうした「魅力の選り分け」こそが因数分解の魅力であり、パークを楽しむ上で重要になってくる。相手の基準を正確に因数分解して項として捉える事が出来れば、パーク内でおすすめのアトラクションを選択したり、次の行動を決めたりするのにも役立つだろう。

利用例②アトラクション分析

又、因数分解を用いると、アトラクションの分析も可能になってくる。問題の解明などに大いに役に立つわけだ。

例えば、東京ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」は人気が左右されやすいアトラクションである。嘗ては二時間以上の待ち時間を誇って、東京ディズニーシー内有数の人気ライドだったが、現在の待ち時間は一時間前後に甘んじることも増えてきた。この問題は、タワー・オブ・テラーの選民性に起因すると考察が可能だ。「タワー・オブ・テラー」とは「ホラーストーリーのアトラクション」であり「フリーフォール型アトラクション」でもある。そのためジェットコースターに乗りたい学生でもストーリーの怖さから気が引けてしまうし、逆にミステリーやホラーに明るいゲストがフリーフォールという性質上乗れないことも有り得るのだ。

 

 具体例:マジックランプシアターはこの先生き残れるか?

東京ディズニーシーにあるアトラクション「マジックランプシアター」は、ランプの魔人ジーニーが登場するシアタータイプの人気アトラクションである。このアトラクションには「ディズニー・ファストパス」がついているが、平均的な待ち時間は20分から75分といったところか。

何を隠そう、このアトラクションはファストパス・アトラクションの中でも待ち時間が短くなりがちなのだ。そのため、ゲストの期待値も必然的に低めになってしまう。今回、このアトラクションは「3D映像のキャラクターショー」として定義しておく。

人間というのは面白く、一度疑いの目で体験すると悪いものばかり目に付くものだ。マジックランプシアターを因数分解してみると「2001年の安いCGアトラクション」「ゲスト全員参加を求められるアトラクション」とどうも人気の出なさそうな要素が並ぶ。

「2001年の安いCGアトラクション」と云う評価は、同パーク内の「ニモ&フレンズ:シーライダー」と比較した際に痛手を被る。2017年にオープンしたこのアトラクションの新鮮な映像と比較すると、些か古さが目立つ。又、3Dアトラクションでもあるから尚更である。

「ゲストの全員参加を求められるアトラクション」としては、東京ディズニーランドの「スティッチ・エンカウンター」が存在し、これはあまり芳しくない評価を受けている。比較対象として東京ディズニーシーの「タートル・トーク」があって、これは基本的に手を挙げなければ参加させられることはない。更に、「タートル・トーク」は「ゲストとキャラクターが会話するアトラクション」という側面を持っていて、これがメインになる。アトラクションにはこれを求めるゲストがやってくるわけだが、「マジックランプシアター」はあくまで「3D映像のキャラクターショー」が主であり、これに期待値を抱くゲストからすればマイナス要素の成り得るのだ。

これまで、「マジックランプシアター」の問題点に目を向けてきたが、この後はこのアトラクションの楽しみ方を考えてみる。

先ず「映画『アラジン』のキャラクターが登場するアトラクション」であるということ。この点では東京ディズニーランドの「ミッキーのフィルハーマジック」があるが、これよりもメイン感が強い。又、こちらはアラジンとジャスミンが登場するが「マジックランプシアター」ではジーニーが登場する。ここに唯一性があると言える。

又、パーク内では貴重な「演者と映像が共同で演技するアトラクション」でもある。同様のアトラクションは非常に少なく、東京ディズニーランドの「ジャングル・クルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション」「魅惑のチキルーム:スティッチ・プレゼンツ”アロハ・エ・コモ・マイ!”」にもその雰囲気はあるが、より露骨でその要素が強いのは「マジックランプシアター」である。

これこれこういうわけで、マジックランプシアターの強みはキャラクターと演出面に隠されており、ファストパスがついているという点で括るべきではないのである。これらはあくまで同型のシアターアトラクションなどと比較されるべきものなのである。

 

おわりに

「ディズニーアトラクション因数分解論」いかがだっただろうか。アトラクションを楽しむ上で、それぞれのよさを分解して正確に確認していくことで、思わぬ遊び方が生まれるかもしれない。

本気時の趣旨は「ディズニーアトラクションの楽しみ方を変える」ことだったのだが、皆さん次第では思わぬ発見があるかもしれませんしね。