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東京に新たに「カリブとホンテ」を作れるか

アトラクション「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」が、実は多数の共通点を持つ「双子」だということはご存知だろうか?

今回は、東京ディズニーランドのオープン当初から人気を博してきたアトラクションであるこのふたつにある共通点を洗い出し、その魅力に迫る。そして、唯二無三として君臨するこのふたつの人気アトラクションに代わる新たなアトラクションは登場するのかについて考えていきたい。

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「ディズニーランドのシンボル」とは何か?

東京ディズニーランドのコンセプトアイコン、言わばパークの中央に位置するマスコットといえば、本来は「シンデレラ城」である。但し、シンボルと言えば別である。

ここで言うシンボルとは、パーク内で定期的に取り上げられる施設のことである。

東京ディズニーランドのエントランスで「カリブの海賊」から「Yo Ho」の曲が流れている。又、2020年からは「ホーンテッドマンション」の「Grim Grinning Ghost」という曲も流れ始めた。「Yo Ho」の方が流れていた期間は長いわけだが、「ホーンテッドマンション」はディズニー・ファストパス対象の人気アトラクションだ。

2018年七月にスタートした、東京ディズニーリゾート35周年のキャッスルプロジェクションショー「Celebrate! Tokyo Disneyland」でも、「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」は取り上げられた。二つは、パーク内のいたるところでその影響を見ることが出来るようだ。

次に、アトラクションが実際にシンボルに成り得るかを検証してみる。

東京ディズニーランドオープン当初から存在する幾つかのアトラクションの、Googleで表示できる記事数を記録した。この点から、ある程度年数の積み上げが起こっていて且つ話題性のあるものを抽出する。

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Googleでの検索数

ホーンテッドマンション」のあるファンタジーランドでは、「アリスのティーパーティー」と「白雪姫と七人の小人」が先駆けていて、それに次いで「ホーンテッドマンション」がランクインした。その後、「ピーターパン空の旅」「イッツ・ア・スモールワールド」「空飛ぶダンボ」「ピノキオの冒険旅行」があとに続くような結果になった。

カリブの海賊」のあるアドベンチャーランドでは、映画でも話題の「ジャングル・クルーズ」が最も多く、「カリブの海賊」は二番手。その後に「ウエスタンリバー鉄道」「魅惑のチキルーム」が並んだ。

然し、「アリスのティーパーティー」や「白雪姫と七人の小人」はそれぞれ『不思議の国のアリス』『白雪姫』というディズニーの人気映画を原作としていて、ここには「東京ディズニーランドのシンボル」以上に「ディズニーのシンボル」としての側面を垣間見ることが出来る。

東京ディズニーランドのシンボル」とするならば、ある程度「東京ディズニーランドとしての独自性」が認められなければいけないと私は考えた。そこで、「ディズニー映画を原作にしないもの」のみを抜き出したものが次だ。

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色がついているのが「パークオリジナルのアトラクション」

こうしてみると、映画の話題性に依らないアトラクションとしての「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」が際立つ。そして、その中でも屈指の人気を誇るという点が、この二つのアトラクションが「東京ディズニーランドのシンボル」と呼べる所以なのだ。

 

 

 

カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」のシステムが凄い!

次いで、「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」のシステムについて紹介していきたい。これらのアトラクションは、ディズニーランド建設時の様々な事情を鑑みて建設され、そこに様々な色付けを行っている。

最大の問題点は「ディズニーランド鉄道」

「ディズニーランド鉄道」は、東京では「ウエスタンリバー鉄道」に当たる。東京と違って、「ディズニーランド鉄道」がパークの外周を走るものであることは有名だ。「カリブの海賊」や「ホーンテッドマンション」のように広大な敷地を利用するアトラクションの建設に当たっては、①入り口はパークの中、②鉄道の線路を潜り、③アトラクション本体はパークの外、という構造が望ましい。

カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」は、「ディズニーランド鉄道を潜るシステム上の需要」「ストーリー上の需要」そして「アトラクションの魅力を増すための演出上の需要」の三つを満たす演出を考案した。

カリブの海賊」では、有名な滝壷を落下するシーンが登場した。あのシーンでは、「ディズニーランド鉄道を潜り」地下一階にライドを建設する「システム上の需要」、船着場を出発したゲストが海賊達が活躍していた時代へとタイムスリップする「ストーリー上の需要」、一階建ての平屋を組むだけで地下一階+一階で二階建て分の高さを確保できる「演出上の需要」を満たした。

ホーンテッドマンション」では、絵画が伸びる部屋のプレショー(前説)が設置された。「ディズニーランド鉄道を潜り」地下一階にライドを建設する「システム上の需要」は同じく、象徴的な怪奇現象の後にゴーストホストの首吊り死体を目撃する「ストーリー上の需要」、階段を上がる描写を入れたり、裏庭の墓場のシーンで高さを演出することが出来る「演出上の需要」を満たした。

日本では鉄道を潜る必要こそないものの、演出自体は残されていて、「ストーリー上の需要」もとい「演出上の需要」を満たすことが出来ている。

 

カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」の生まれ

東京ディズニーランドのシンボル」である「カリブの海賊」「ホーンテッドマンション」は、如何にして登場したのだろうか。今回は、アメリカ合衆国カリフォルニア州にはじめて2つが生まれる経緯から、東京に輸入した歴史、そしてその後を紹介したい。

 

時代はディズニーランドのオープンに遡る……。

そもそも、「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」は、前者が1950年代前半、後者が50年代後半から企画をスタートしていた。アメリカ合衆国カリフォルニア州に最初のディズニーランドが出来たのは1955年であるから、オープン前後の時期である。

当初、「カリブの海賊」も「ホーンテッドマンション」も、ウォークスルータイプのアトラクションが考案されていた。「カリブの海賊」は不気味な蝋人形館として、「ホーンテッドマンション」は「ホーンテッド・ハウス」という名前でファンタジーランドへの建設が企画された。

このふたつを精巧かつ成功なアトラクションへと発展させたのは、次のふたつの出来事だった。

ひとつめは1957年、ウォルトが従来の五つのテーマランドに加えて、新たに六つめのテーマランドを企画することに決めたことだ。それが、ニューオーリンズ・スクエアである。ニューオーリンズアメリカ合衆国ルイジアナ州にある都市のことで、19世紀にフランス領から独立、アメリカ合衆国の州に名を連ねることになった。ニューオーリンズ・スクエアは正にその19世紀のニューオーリンズがモデルとなっていた。そこで、「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」はここに建設することが決定した。

先ず、「カリブの海賊」の舞台であるカリブ海に、ニューオーリンズは面している。「ホーンテッドマンション」は、外観をニューオーリンズ風にイメージし直すことで対応できた。

ふたつめは1964年のニューヨーク万国博覧会と、それにまつわる準備だ。当時、パビリオン設置を依頼されたディズニーは、四つの魅力的なアトラクションを生んだ。「カルーセル・オブ・プログレス」「イッツ・ア・スモールワールド」「リンカーン大統領と共に」「マジック・スカイウェイ」である。

この四つのアトラクションが「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」の育ての親であり、その成長に大きく影響を与え、尽力もした。

イッツ・ア・スモールワールド」で登場した画期的で効率のいいボートライドのシステムは、「カリブの海賊」でも遺憾なく発揮された。「イッツ・ア・スモールワールド」の特徴である音楽が常に途切れず、反響し過ぎないようにする技術も、人気の曲「Yo Ho」に応用されたかもしれない。

ホーンテッドマンション」のライドシステムは「オムニムーバー」だ。これは、ベルトコンベヤの上に椅子を載せた形で、効率よく人を乗せることが出来る。「マジック・スカイウェイ」が原型である。

イッツ・ア・スモールワールド」や「カルーセル・オブ・プログレス」ではそれぞれ「小さな世界」と「There's a great big beautiful tomorrow」などの曲がアトラクションのために作曲された。「カリブの海賊」に「Yo Ho」が、「ホーンテッドマンション」に「Grim Grinning Ghost」が作曲されたのはその影響を汲んでのことかもしれない。

又、何より面白いのは「魅惑のチキルーム」を源流にし、「カルーセル・オブ・プログレス」や「リンカーン大統領と共に」を期に発展した「オーディオ・アニマトロニクス」である。オーディオ(音)、アニメーション(動き)、エレクトロニクス(電気)を組み合わせた造語で、ロボットをエンターテイメントに使うという当時としては異様な発想のものだった。演者の動きを記録してロボットに再現させ、その「動き」と「音」を同期するという代物である。言わずもがな、「カリブの海賊」の海賊たちや「ホーンテッドマンション」のゴーストたちの多くはこの技術が使用された。

先にパークに顔見せしたのは「カリブの海賊」だった。オープンした1967年の前年冬、ウォルト・ディズニーが亡くなっている。「ホーンテッドマンション」はその二年後の1969年に満を持してオープンした。この二つは、ウォルトの遺作アトラクションであるという点でも共通しているかもしれない。

 

東京にやってきた

1983年、アメリカ合衆国外初のディズニーパークこと東京ディズニーランドがオープンした。日本の会社オリエンタルランドがディズニーと協議して進めたこの計画では、パークオープン当初から「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」が設置されている。その点で気にされていたのは日本向けのローカライズである。

東京ディズニーランドニューオーリンズ・スクエアは設置しないことになっていた。そのため、「カリブの海賊」はアドベンチャーランドに設置された。また、その隣にはロイヤルストリートというサブエリアが用意され、これはニューオーリンズをモデルにしている。

ホーンテッドマンション」は事情が複雑だ。本来はウエスタンランドに設置することになっていた。然し、1979年──東京ディズニーランドのオープンの④年前──、期待の新入生こと「ビッグサンダー・マウンテン」がアメリカに登場し、オリエンタルランドは面食らった。これをなんとしても東京ディズニーランドに設置したいと考えたため、「ホーンテッドマンション」はウエスタンランド設置計画を挫かれたのである(現在の「ビッグサンダー・マウンテン」の位置に「ホーンテッドマンション」が建っていたらと想像してみると面白い!)。その後、「日本に於いて、幽霊は御伽噺だ」ということでファンタジーランドに設置されたのだ(前の項目の事情を踏まえれば「帰ってきた」とも言える)。

ホーンテッドマンション」では更に、アトラクションの部屋のシステムが一部変更になっただけでなく、日本に於いて低音に恐怖を感じる人が多いという点から、屋敷の中で流れる「Grim Grinning Ghost」のキーが下がったりもした。

 

その後の展開

 2003年、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』と『ホーンテッドマンション』の両映画が公開される。両者人気作品となり、とりわけ前者は2020年現在五作品が出ていて、六作目の企画も持ち上がっている。

 

「カリブとホンテ」を作る

ここで、本記事に於ける「カリブとホンテ」を定義する。

カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」こと「カリブとホンテ」は

①パークのシンボルになる

②システム/ストーリー/演出上の需要を満たす

③歴史的な転換点になる

の三点を満たしているということにする。

 

①パークのシンボルになる

「パークのシンボルになる」とは、「パークオリジナルのアトラクション」且つ「皆から愛されている」ものだと考えていた。

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現在のアトラクションで表を作り直す

 こうしてみてみると、東京ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」などでは「ホーンテッドマンション」に代替しきれないことがよくわかる。意外にも情報の多かったのは「レイジング・スピリッツ」であった。

東京ディズニーランドについては、スペース/ビッグサンダー/スプラッシュ・マウンテンのいわゆる「三大マウンテン」が他を圧倒しているようだ。

「Celebrate! Tokyo Disneyland」では、「ビッグサンダー・マウンテン」と「スプラッシュ・マウンテン」がフィーチャーされていた。又、2008年迄公演した「ディズニー・ドリームス・オン・パレード」では、「ビッグサンダー・マウンテン」を模したフローとが登場していることからも、これらの人気とシンボル性がわかる。

更に、以下のサイトで、「ビッグサンダー・マウンテン」は2位、「スプラッシュ・マウンテン」は4位の高評価だ。「スペース・マウンテン」の18位はあるが、Googleが表示できる異様な記事数を見るとその差は埋めようがない。

(尚、「スプラッシュ・マウンテン」の原作はディズニー映画『南部の唄』だが、その存在が人口に膾炙しておらず、現在視聴できる状況にないため特別に扱っている)

tdrnavi.jp

東京ディズニーシーについてみてみると事情は複雑だ。

話題性と人気を兼ね備えたアトラクションの登場は、後世に評価を仰がなければいけないかもしれない。「レイジング・スピリッツ」は14位につけている。

tdrnavi.jp

 

②システム/ストーリー/演出上の需要を満たす画期的表現

話は「ビッグサンダー・マウンテン」「スプラッシュ・マウンテン」へと移る。

各国設置時にローカライズされている「ビッグサンダー・マウンテン」だが、これら三つを「同時に」満たす演出があるかと言われると些か首を傾げざるを得ない。少なくとも現時点で、コースレイアウトやキューエリアに於ける特別なポイントは見当たらない。

強いて言うならば三度目の巻き上げか。①ジェットコースターとして巻上げを行うシステム上の需要、②ダイナマイトで無理に採掘を行う様子を見せるストーリー上の需要、③巻き上げがマンネリ化しないようにする演出上の需要がある。然し、東京ではこの演出は行われていない。

スプラッシュ・マウンテン」には面白いシーンがある。それは待機列である。

東京版の「スプラッシュ・マウンテン」は、アメリカ合衆国内の「スプラッシュ・マウンテン」の山小屋モデルのものと異なって、洞窟がモチーフとなった屋内待機列だ。①雨天時も屋内にゲストを収容できるようにするシステム上の需要、②スプラッシュ・マウンテンという山が洞窟に水が満ちてできたものだと示すストーリー上の需要、③アトラクションの水路を都合よく設置するべく乗り場の高さにゲストを移動させる演出上の需要にこたえている。

 

③歴史的な転換点になる

東京ディズニーランド内で初めての濡れるアトラクション、初めてのライドフォトを撮影するアトラクションであった。濡れるアトラクションとして唯一無二でありながら、ライドフォトは東京ディズニーランド・シー内の多くのアトラクションに波及した。

東京ディズニーランドで初めて登場した新規エリア「クリッターカントリー」に設置された。その後には新規エリア「トゥーンタウン」が登場するなどの先駆けになった。

 

新たに「カリブとホンテ」を作れるか?

このように見てみると、「ビッグサンダー・マウンテン」はポスト東京ディズニーランドとして見事なアトラクションかもしれない。又、「スプラッシュ・マウンテン」は正に「カリブとホンテ」に代替出来るかもしれない。無論、「スプラッシュ・マウンテン」は映画『南部の唄』の世間的イメージには配慮していないが……。

では、続いては、

①パークのシンボルになる

②システム/ストーリー/演出上の需要を満たす画期的表現がある

③歴史の転換点になる

の三点から、今後生まれる「カリブとホンテ」を考えてみたい。

 

実は最もハードルの高いポイント

ビッグサンダー・マウンテン」では、②を満たすことが出来ないでいた。そういうわけで私はポスト「カリブとホンテ」と呼んだ。①と②と③では、どれが最もクリアの難しいポイントだろうか?

私はやはり①であると思う。何故なら、②③はディズニー側のデザインでクリアの可能なポイントであるのに対して、①はゲストの需要と強い相関があるからだ。

一つ目に、「パークのシンボルとして皆から愛される」ということ。特に東京ディズニーシーについては、オープンからまだ20年を数えておらず歴史が浅い。「タワテラとソアリン」、つまり「タワー・オブ・テラー」と「ソアリン・ファンタスティック・フライト」はどうだろうか。

②ではそれぞれが面白いシステムを持っていると思う。③では、「主人のいない館を探索し、過去の真実を知る」という東京ディズニーシー内でも目立つストーリーを持ち、「海外パークのアトラクションを日本風にして持ち込む」という点でも高評価できる。だが、肝心の①については浅い歴史からまだ浸透していない感がある。それは、上で示した表にも明らかだ。

第二に、「パークのオリジナルである」ということも難しくなっている。

2013年に香港ディズニーランドに登場したアトラクション「ミスティック・マナー」以降、新たに登場した「ディズニー映画を原作にしないアトラクション」は十個あり、そのうち七つは2016年に上海ディズニーランドがオープンするのに際して登場したものである。

現在、ディズニーはピクサー、マーベルスタジオ、スター・ウォーズ20世紀FOXを吸収し強大なエンタメ帝国を築いており、世界のディズニーパークでは「ディズニーの代表」をいとも作ることが出来る。事実、「スター・ウォーズ:ライズ・オブ・ザ・レジスタンス」などのアトラクションは多様な需要にこたえる演出や、歴史の転換点となるような特徴を持ち合わせている。然し、それは「ディズニーのシンボル」に過ぎない。「ディズニーパークのシンボル」となり得る、皆に愛される新たなアトラクションというのは減少傾向にあるのだ。

若しかしたら、「カリブの海賊」「ホーンテッドマンション」のようなアトラクションは登場しないかもしれない。

 

おわりに

今回の記事では「カリブの海賊」と「ホーンテッドマンション」を分析しながら、第二の「カリブとホンテ」を作ることが出来るかについて検証してきた。「ジャングルクルーズ」「ビッグサンダー・マウンテン」「スペース・マウンテン」など、これまで登場してきたディズニーパークの人気アトラクションは、ディズニー映画のイメージに頼らずとも自らの領分を開発してきた。

これからの未来、「ディズニーパークのシンボル」として新たなアトラクションが定着するかどうかに期待が寄せられる。