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『ティガームービー/プーさんの贈りもの』が日本人に必要な理由

『ティガームービー/プーさんの贈りもの』を観ましてね。

 

泣 い た

 

どうしてでしょう……何があったのでしょう……。

普段は常体(だ・である)調の本ブログですが、数ヶ月ぶりの更新なのでリハビリも兼ねて敬体(です・ます)調でお送りする、『ティガームービー/プーさんの贈りもの』を今観る理由です。

 

 

『ティガームービー/プーさんの贈りもの』の物語

「ティガーにもどこかに家族がいるでしょう?」。100エーカーの森で一番のお調子者であるティガーは、自分に似た家族が誰もいないことに悩んでいました。オウルに相談すると、どうやら家族の木というものがあるらしい……。ティガーは、家族が揃って暮らす家族の木を探しに出る。ところがその過程で様々な事件が起こる……。

盲目なティガーの哀れさは万人共通

ティガーは思春期なんですかね。

行くところ来るところで「どこかに家族がいるに違いない」と信じて聞きません。ティガーの歌"A Wonderful Thing About Tigger"では、"I'm the only one!"「世界一のトラは俺ひとり!」と歌い上げますね。それとはっきり矛盾しているんです。『くまのプーさん 完全保存版」でも、ティガーはせっかちで思い込みが激しいキャラクターと描写されていますが、それにしてもというべきか、そんな彼だからというべきか、盲目に家族を探すティガーはなんとも哀愁漂います。彼はいつしか、いないとわかっていてもいると信じたいだけになっているんです。でも、その気持ちがわかってしまう。

だから、逆に「家族だ!」となったときのうきうきした感じがとってもつらいんです。

大奮闘のルー

ルーもルーで寂しいです。

彼は、ティガーに兄貴になってほしいと思っていますが、ティガーは聞きません。ルーは当初、「僕にはママがいるよ、ティガーにもどこかに家族がいるでしょう?」ともちかけますが、それは血の繫がったカンガのこと。いっしょにジャンプしてくれる家族がいないのは、ルーも同じだったんですね。

ルーは、ティガーが「ティガーの家族しかできない」というウープ・ディ・ドゥー・パー・ループ・ディ・ドゥー・パー・アリー・ウーパー・ジャンプを必死に練習します。

家族という形で展開される恋愛ドラマですよコレは。

そして、ルーの提案である手紙、変装は次々に失敗していきます。それを、一番ルーが悔いているというのもつらいです。

キャラクターが凄い!

プーさん、ピグレット、イーヨーはそれぞれ、ティガーに対して「ぼくらはティガーになれないんだ」と想いながらも、仲間として大切に慕う気持ちを持っています。カンガはルーの母親として、ティガーを心配し包み込もうとします。

そしてラビットは、ティガーのことを嫌いながらもどこかいないと落ち着かない素振りを見せます。

雪の降る中、「からかったんだな」といって飛び出していったティガーを探す彼らがラビットを頼るシーンは感動ものです。そして、それを受けてたつラビットもまたすごい。

彼らそれぞれにティガーに対する想いはあれど、どうも、いっしょにいて楽しくしてほしい。そう思っている関係が素晴らしいから故の「家族」なのですが、これを突き放して盲目に家族を探すティガーがつらいです。

 

ディズニーが捨てた「家族」と拾った「家族」

ティガーが当初想定していた「ティガーの家族」というのは、しましまでジャンプが上手。ティガーに「似ている」家族でした。そして、映画の最後は存在しないことが明かされます。そして、ルーを弟として迎え、100エーカーの森の仲間達を家族として迎えます。

既にこれがいい。素晴らしい。ディズニーはしばしば、「家族向けだから反家族の物語を書かない」と弱点を突かれるんですが、この映画、肉親や血縁、契約上の家族の存在を「そんなのはいない」と一蹴しているんです。そして、「家族と認めた人が家族」なんだとやる。感動です。すごい。泣いた。

ディズニーはちゃんとやってくれたんですね。家族関係に悩まされる人の多い中、家族とは単なる容姿や仕草の遺伝の話ではないんです。心と心が通い合って、無意識に相手を助けたくなるような関係のことだと。やばい。

Your Heart Will Lead You Home

楽曲がすべてに於いて優秀です。

"Someone Like Me"は、ティガーが自分の孤独を憂う歌。この歌が序盤から入ってくることで、映画の空気が一気に冷えます。

"Whoop-de-Dooper Bounce"は、歌詞の楽しさだけでなく、ルーとティガーの関係がよく表れています。

"Round My Family Tree"は、「フレンド・ライク・ミー」のようでありながら、ティガーがありったけの家族との(架空の)関係を喋り倒します。このシーン、非常に楽しく明るいシーンなのですが、彼が「家族」と呼んでいるのはルーやプーさんが書いた手紙に出てくる「家族」。実は存在しないと言うのを観客は知っているので、めちゃくちゃつらいです。

"How to Be a Tigger"は、「ティガーになろう ティガーになろう みんなでティガーになろう」という歌詞の歌。本作、序盤から「ぼくらはティガーになれないよ」という台詞が随所に登場し、ティガーになりたいのはルーだけという状態が続くんですが、ここでついに100エーカーの森全体がティガーのためにティガーの家族になりきろうとする。心が温まります。

そして、今作の主題歌”Your Heart Will Lead You Home”

If you feel lost and on your own.
N' far from home. You're never alone, you know.
Just think of your friends. The ones who care.
They all will be waiting there. With love to share.
And Your Heart Will Lead You Home

はぐれ、一人ぼっちのように感じても
家族を離れても、君はひとりじゃない
君の大切な友達のことを思い浮かべて
みんな心配して待っているよ
君の心が家族へ導いてくれる

(筆者のエクストリーム意訳)

 やばい……。この歌がすべてを物語っております……これが家族のあるべき形なのではありませんか。ねえ。みなさん(号泣)

大切なのは心

ところで、今作では非常にシンプルな形で「大切なのは心」というのを体現しています。

ティガーの探していたペンダントはハートの形をしていて、作中ずっとからっぽでしたが、最後には一枚の写真で満たされる。あれがすばらしい。家族で胸がいっぱいになるんですね。ティガーは常に「手紙」とか「ペンダント」とか、「家」とか「飾りつけ」とかを大事にします。それに「しましま」や「ジャンプ」なんかも。「太くて高くて立派なしましまの木」を探していたのも。それを条件だとまた、ルーやプーさんたちも、「ティガーになれない」というのをはじめは「ジャンプできない」という意味で使っていました。でも、実際は違ったんです。

ティガーが見つけた家族は心の繫がった純真の友達のことでしたし、ルーは最後に勇敢になるという形でウープ・ディ(略)ジャンプを成功させてティガーの家族になります。実際に大切なのは形ではなく心だったんです。

英語自体の問題ですが、HouseとHomeの違いと言うものがあります。今作ではティガーが家を建て増ししたり、イーヨーの家の問題が出てきたりしますが、あれがHouseです。骨身と建物のこと。Homeとは団欒や家族に囲われた「帰るべき家」という意味合いを持っている。つまり、ティガーの帰るべき「迎えてくれる家族」を意味しているんですねえ。

日本人に捧ぐ

ちなみに、この曲がTDR25周年の東京ディズニーランドのパレード「ジュビレーション!」でも使用されています。

元々、東京ディズニーランドというのは経営が「日本風」でした。現在でもディズニー社の手にない唯一のディズニーパーク(厳密には東京ディズニーシーもだが)であって、オープン当初はたいへん苦労したようです。お土産で収益を得るとか、パレードのために場所取りするなどは、東京オリジナルの展開です。アメリカ本国では、それぞれレストランで収益を得ていますし、場所取りは花見が系譜にあると言われています。

そして何より、「ファミリーエンターテイメント」として完成したディズニーランドに対して、東京ディズニーランドは家族だけでなく、友達同士や恋人同士、はたまた一人でパークを訪れる例が著しく多かったと言われます。それが東京ディズニーシーの建設に流れました。つまり、恋人向けのパーク作りがなされたというわけです。

さて、『ティガームービー/プーさんの贈りもの』のエンドロールを観ると、ざっくり3分の1ぐらいの人が日本人であることに気付きます。それもそのはず、この映画は日英合同で製作され、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの日本部署が参加しているのです。詳しい組織形態は私も分かりかねますが、まあ、日本人が多く参加して制作されています。そして、公開が2000年で、これは東京ディズニーシーオープンの前年なのです。

東京ディズニーリゾート25周年のパレード「ジュビレーション!」に於ける"Your Heart Will Lead You Home"とは、つまり、「ファミリーエンターテイメント」を共に楽しむ「迎えるべき仲間」について歌った歌詞なのであります。隣にいる友達、恋人、そして家族は、あなたが迎えるべくして迎えた「家族」であり、そこに姿や性格は関係がないのです。

おわりに

すいません! まとまりませんでした!

感動して錯乱しながらかいているのであまりよく言い表せているとはいえませんが、この文章を書きながら未だに悶々としています。ドキドキします。今夜は眠れないぜ。

「プーさんよりもっといい主人公がいる」と言ったり、ティガーが紅茶を吹いたり、プーさんが毒舌だったり、謎のダンスミュージックが入ってきたり、ところどころ「プーさん」っぽくなかったり原作にリスペクトがないところはあるんですが、まあ、アメリケン映画として観れば文句ありません。

みなさん、『ティガームービー/プーさんの贈りもの』よろしくおねがいいたします。

 

あなたの家族より